IT資格から中小企業診断士へ|資格がキャリアに変わるとき
「中小企業診断士を目指したきっかけは何だったのか?」
この記事では、ITパスポートから情報処理技術者試験の最上位まで資格を積み重ねてきた私が、「なぜ中小企業診断士を選んだのか」「なぜ、そこにたどり着いたのか」を、実体験をもとに振り返ります。
キャリアの将来に漠然とした不安を抱えていた30代前半の私は、「なんとなく」始めた資格取得を経て、初めて“自分の意思で資格を選ぶ”という行動に踏み出しました。
資格がキャリアになる。その最初の気づきを、リアルに綴ります。
資格の選び方に悩んだ時期|実務とのギャップに気づいた瞬間
システム監査技術者まで取得したとき、達成感と同時に、ふとした“空白”のような感覚があった。
「ここまで取ったけど、次は何を目指せばいいんだろう?」
資格取得のきっかけは、前職の先輩の一言だった。そして、セキュアド、上シス、システム監査技術者までたどり着いた。でも、その先に、先輩の声はなかった。
情報処理技術者試験の体系図を眺めながら、ふと思った。
「ここまで来たなら、もう完全制覇してしまうか?」
そのときの私は本気でそう考えていた。試験制度をある程度理解していたからこそ、あと残っている資格も分かっていた。
エンベデッドシステムスペシャリスト、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト……。
けれど、少し時間をおいて冷静に考え直した。
「いや、これ以上の資格を取ったとしても、自分の仕事で使うことってあるか?」
「営業職である自分にとって、それは“意味のある努力”なんだろうか?」
確かに、情報処理技術者試験の体系を“コンプリート”することには満足感があるかもしれない。けれど、それは「趣味」としての達成でしかないんじゃないか――そんな違和感が、じわじわと浮かび上がってきた。
「このまま資格を取り続けて、どこに向かうんだ?」
資格取得の旅を続けることは楽しかった。でも、心のどこかで、“この先の方向性”を考える必要があると感じ始めていた。それに、30代前半という年齢も影響していた。 仕事にも慣れ、会社の内情や人間関係、業界の構造も少しずつ見えてくるようになっていた。
「今の会社にこのままいれば、安定はしている。でも、定年までずっといられる保証があるか?」
そんな漠然とした不安が、じわじわと心に広がっていた。
会社にすべてを委ねる人生に対するリスクを、少しずつ意識しはじめていた時期だった。
だからこそ、
「この先も続ける価値のある資格とは何か?」
「“キャリア”につながる資格って、どんなものだろう?」
と考えるようになった。この問いが、次の資格選びの軸になっていった。
中小企業診断士を目指す決意の裏側|会社に依存する人生でいいのか?
“資格を取る意味”を問い直すようになった私は、次の一歩をどう踏み出すべきかを、現実的な視点で考えるようになっていた。
当時30代前半。中堅社員として、会社の仕組みや業界の構造が少しずつ見えてくるタイミングだった。
一方で、社会も大きく変化していた。日本は人口減少と高齢化の真っただ中にあり、これまでのように「商品をたくさん作ってたくさん売る」ビジネスモデルが通用しなくなりつつあった。
「このまま今の会社に頼っていて、定年まで安泰と言えるのか?」
そんな漠然とした不安が、日常の中で少しずつ大きくなっていった。
私が勤めていた会社も、看板商品に依存する形で経営を続けていた。だが、その商品も市場では徐々に陰りが見え始めていた。それでも社内はどこか楽観的で、「うちは大丈夫」「上が動かないからね」といった空気が蔓延していた。
「本当は、動かなきゃいけないのは、あなたたちじゃないのか?」
そう思いながらも、私は日々の業務に追われていた。
そんなある日、取引先との打ち合わせで、経営に関する話題になった。社内の幹部が労務管理について語り始めたが、その内容は明らかに誤解に基づいたものだった。
「この人、本当に労務の知識があるのか?」
「決算書、ちゃんと読めてるのか?」
私は内心そう感じながらも、場の空気に合わせて曖昧に頷いていた。けれど、ふと我に返った。
「もし取引先が、この話を真に受けて、間違った判断をしてしまったら……?」
誤った知識が、誰かの経営判断に影響する可能性がある。しかもそれが“信頼される立場”の人間からの発言だったとしたら、なおさらだ。
「知識のないまま経営を語ることは、相手に対して失礼だ」
そう強く思った。
経営者は、日々の売上がそのまま生活に直結する世界で生きている。そんな人たちと対等に向き合うためには、自分自身も本物の知識を持っていなければならない。
それに比べて、会社の中には、あいまいな知識にすがりながら、上司や会社の意向に従って動く幹部も少なからずいた。彼らの思考停止が、いずれは現場や会社全体にしわ寄せをもたらす。
「俺は、そんな人間にはなりたくない」
「未来は、今の自分たちが作るものだ」
そう思ったとき、初めて“本気で知識を身につけよう”と考えた。
そして、それは仕事のためだけではなかった。
変化のない社風、危機感の薄い上層部。その中で生きることが、どれほどのリスクをはらんでいるかを、私は身をもって実感していた。
「だったら、会社に依存せずに生きていける人生をつくるべきなんじゃないか?」
「会社がなければ生きていけない人生」ではなく、「何かあっても自分の力で生きていける人生」へ。
そのためには、仕事で成果を出しながらも、自分だけの“武器”を持つ必要がある。そう思った私は、資格の選択肢を改めて見直した。
公認会計士、税理士、社労士、中小企業診断士──。いわゆる士業が頭に浮かんだ。けれど、会計士や税理士は、長期の勉強と実務経験が前提で、今の自分には現実的ではなかった。転職や独立を考えていない以上、実務要件の壁は大きすぎた。
そうして最後に残ったのが、社労士と中小企業診断士。
社労士のテキストを手に取ったが、条文の言い回しが難しく、問題も細かい。「これは自分には合わないかも」と感じた。
一方で、中小企業診断士のテキストには、「企業経営理論」「財務会計」「経営分析」など、今の自分の仕事に直結するキーワードが並んでいた。
「これは、面白そうだ」
「そして、実務にもきっと活きる」
その瞬間、他の資格とはまったく違う“手応え”を感じた。
単なるキャリアアップではなく、「仕事にも活きるし、会社に依存せずに生きていくための武器になるかもしれない」
そう思えたことが、中小企業診断士を目指す決定打となった。
こうして私は、初めて“自分の意思で選んだ資格”として、中小企業診断士の勉強を本格的に始めた。
中小企業診断士への挑戦|試験勉強と転勤と家族のはざまで
中小企業診断士の勉強を始めたのは、まさに生活が大きく動き出すタイミングだった。
長男の誕生、1次試験の1ヶ月前に突如伝えられた転勤の内示、試験直前での引っ越しと新天地での赴任、そして長女の転園——次々と押し寄せるライフイベント。
少し振り返るだけでも、めまぐるしい出来事ばかりだった。
長男は予定より1ヶ月以上も早く誕生し、育児の真っ只中。そんな最中に、1次試験の1ヶ月前、まさかの転勤の辞令が下った。
「今、このタイミングで……?」
思考が一瞬止まりそうになる中、必死に状況を整理する。新天地は新幹線での移動が必要な距離。生後半年にも満たない長男と、環境が変わる長女のことを考えると、不安と焦りが募っていった。
「この状況で本当に合格できるんだろうか……」
けれど、心のどこかに、消えない火が灯っていた。
「会社に住む場所まで決められて、すべてを委ねていいのか?」
中小企業診断士を目指すと決めた理由——それは、「会社に依存しない人生をつくりたい」という強い想い。その原点を思い出したとき、この過酷な状況を“言い訳にしない覚悟”が自分の中で静かに育っていった。
8月1日に引っ越しを終え、数日後には新幹線に乗って一次試験を受けた。新しい土地での慣れない業務、新居の段ボールの山、生まれたばかりの長男、転園したばかりの長女。どこを切り取っても余裕なんてなかった。
まとまった勉強時間を確保するのはもはや夢。だからこそ、スキマ時間をかき集めるようにして勉強を重ねた。
「なんとしても一発合格を決める」その気持ちだけが、当時の自分を前に進ませていた。
そして、一次試験を突破。続く二次試験もストレートで合格。振り返れば、本格的な勉強開始から、わずか7ヶ月間の出来事だった。
すべてを終えたあと、口述試験の合格通知が届き、数日後にはTACから合格祝賀会の招待状も届いた。しかしその頃の私は、高熱で寝込んでいた。
「きっと、張りつめていた糸が切れたんだろうな……」ベッドの中、合格通知を眺めながらそう思った。セルリアンタワーでの祝賀会には行けなかった。けれど、それでも構わなかった。
自分の中には、「やりきった」という確かな手応えが残っていた。
家族、仕事、勉強——どれも手を抜けない中で、諦めずに走り抜けた経験。それは、試験の合格だけではない“何か”を、自分の中に残してくれた。
「何事も、やればできる」
「小さくても、確かに未来への一歩をつくれた」
この小さな自信が、のちのキャリア選択や、さらなる資格への挑戦につながっていくことになる。
中小企業診断士が変えた自分|キャリアと未来への手応え
資格を取ったからといって、人生が劇的に変わるわけじゃない。
それは、中小企業診断士に合格した今でも、心からそう思ってる。
でも、確かに“何か”は変わった。
それは他人の評価や収入の増減じゃなくて、自分の中に生まれた「意識の変化」だった。
後ろ向きだった思考が、少しずつ前を向くようになった。
いまだに心配性だし、最悪のケースを想定する癖もある。 でも、「自分の力で未来は変えられる」って思えるようになった。
中小企業診断士の合格は、ただの資格取得じゃない。長男の誕生、転勤、長女の転園…… あのタイミングで重なった数々のライフイベントを乗り越えた先にあった、“ターニングポイント”だった。
振り返れば、働きながらの勉強法、時間の使い方、合格という結果。 それが自信になって、考え方にも変化が起きた。
でも、何より大きかったのは、「前向きな思考への転換」。
昔は、タイムリープものの小説ばかり読んでた。 「もしあのときに戻れたら……」って、やり直したい気持ちを投影してた。
けど今は、同じ物語を読んでも受け取り方が違う。
「やり直したい」じゃなく、「今から始めればいい」と思えるようになった。
やり直しはできない。 でも、“今この瞬間”からなら未来は変えられる。
そんなふうに考えるようになってから、座右の銘として大切にしている言葉がある。
過去と他人は変えられない。
変えられるのは、自分と未来。
神よ、
変えることのできないことを受け入れる冷静さと、
変えられるものを変える勇気と、
そしてこのふたつを見分ける英知を、私にお与えください。
資格とは、ただの合格証書じゃない。
知識を得て、新しい景色を見るための“パスポート”であり、 価値観を変える“きっかけ”であり、 自分を信じる“証”でもあるんだと、今はそう思っている。
中小企業診断士の合格後も、社内で資格を公言していたわけじゃない。 でも、自分の中では確かに物の見方が変わっていた。
感覚じゃなくて、知識と論拠で物事を見るようになったし、 会社や業界といった枠組みに縛られず、もっと広く、俯瞰して考えるようになった。そして、「会社がすべて」じゃなく、「自分の人生は自分で選ぶ」っていう感覚。
中小企業診断士の勉強を通じて身につけた思考や知識は、今もずっと自分の中に生きている。 きっとこれからも、少しずつ形を変えながら、自分の歩みを支えてくれるだろう。
今の自分が未来をつくる。 人生は点じゃなくて、線でつながっていく——。
そう実感しながら、次の景色を見に行こうと思ってる。
まとめ|「資格がキャリアになる」と気づいた瞬間
私にとって中小企業診断士の取得は、単なる“勉強の延長”ではありませんでした。
情報処理技術者試験を通して知識の土台を築き、中小企業診断士試験を通じて実践的な経営視点が身につき、そして何より「自分の人生を自分で選び取ることができる」という感覚を得ることができました。
それは、ただのキャリアアップではなく、「人生の選択肢を増やす」とう意味での大きな一歩だったと、今では実感しています。
「会社がなければ生きていけない人生」ではなく、「何かあっても自分の力で生きていける人生」へと。
先輩の一言から始まった資格の道のり。
その中で、中小企業診断士は初めて“自分で選んだ資格”として、私の中に強く刻まれました。
もちろん、資格を取ったからといって、すぐに人生が劇的に変わるわけではありません。それでも、診断士を目指して勉強を始めたあの時から、私の中にはひとつの「軸」が生まれました。
会社に振り回されない人生。
自分の知識を使って未来を切り拓いていける人生。
そうした価値観の転換が、中小企業診断士への挑戦を通じて芽生えてきたのだと思います。
今、もし「このままでいいのか」と感じている方がいらっしゃったら、私はこう伝えたいです。
資格を取る理由に、立派な動機は必要ありません。
でも、自分の未来を考えるきっかけには、きっとなります。
そう思えるようになったことこそ、私にとって“キャリアの本当の始まり”だったのかもしれません。
あの日、「会社に振り回される人生はもう嫌だ」と決めた思いは、今も変わっていません。中小企業診断士の勉強を通じて得た知識や考え方は、今でも自分の中で静かに息づいています。
今の自分が未来をつくる。
人生は点ではなく、線でつながっていく——。
そう心に刻みながら、これからも一歩ずつ、歩み続けていきます。
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